テニスのツボ

超理系な現役テニスコーチによるテニス情報ブログです。 「誰かに話したくなる」ようなテニス雑誌にも載っていないような 超マニアックなことをお伝えしていきます。 トッププロの情報や自身の選手活動も定期的に更新中です。

カテゴリ:テニスの技術 > サーブ

サーブの技術のイメージを伝える時に
「上から下に打て」
と教えるコーチと
「下から上に打て」
 と教えるコーチの2種類がいます。

私は「上から下に打つべき」と考えている派です。。

もちろんイメージの話なので、どちらのイメージで打った方が打ちやすいかは教わる側の受け取り方や、コーチの伝え方で変わるのでどっちが正解、というのはないと思うのですが、「下から上に打つべき」派の代表的な謳い文句で次のような話があります。


ベースラインから相手コートのサービスラインまでの距離とネットから相手コートのサービスサービスラインまでの距離は比率にすると3:1の比率である。サーブを直線で打った場合、ネットの高さは約1mなので、打点の高さを3m以上にしなければ必ずネットしてしまう。よってサーブは下から上に打つべきだ。



スクリーンショット 2019-08-10 2.14.31
 図にするとこんな感じですね。

このことは私の愛読書「勝てる!理系なテニス 物理で証明!9割の人が間違えている”常識”」という本にも書いてあります。
因みに私は身長175cmくらいなのですが、ラケットをサービスの打点の高さに持っていくとスイートスポットまでの高さは地面から250cmくらいでした。サーブの時に軽くジャンプしますが、10cmくらいしか飛んでいないのでおそらく260cmが私の通常のサーブの打点の高さです
260cmだと当然3mより低いので直線で打つとネットしてしまいます。
ここまで異論はありません。

問題は「よってサーブは下から上に打つべきだ」という結論です。
ここは残念ながらこの本で唯一同意できませんでした。 (この本では被験者が下から上に打つ感覚で打ったらうまくいった!とのことなのでこの被験者の方には下から上へのイメージがあっていたと思います。)


本当はどっちが正しいのか



まず下から上か、上から下かを語る前にその中間の「地面と平行に打つ」とどうなるでしょうか?
スクリーンショット 2019-08-10 2.40.08


こんな感じで飛んでいきます。
ただ、地球には重力がありますので、当然時間とともに落ちていきます。スピードが速ければ遠くまで飛びますし、ゆっくりなら手前に落ちます。(重力加速度と空気抵抗)

スクリーンショット 2019-08-10 2.55.23



また同じスピードの場合はフラットに打った方が遠くまで飛び、トップスピンを多くかけると手前に落ちます。(マグヌス効果)
スクリーンショット 2019-08-10 3.01.39


このことから地面と平行に打つと「80キロくらいで」、とか「このくらいスピンをかけて」打つとサービスボックスに入るなー、とあくまで感覚ですが理解できます。




では地面と平行より上、すなわち下から上に打つとどうなるでしょうか?
起こる現象は同じです。スピードが速ければ遠くまで、遅ければ手前ですが、発射角が上になった分より遠くに飛ぶようになります。


スクリーンショット 2019-08-10 3.14.05


そうすると地面と平行の時に入っていた80キロのサーブは今までより飛んでしまうので、手前に落とすためにはスピードを落として50キロで打つか、よりスピンの量を増やすしかありません。





それに対して上から下に打つとどうでしょうか。


スクリーンショット 2019-08-10 3.20.39



発射角が下がったので今まで飛びすぎていた120キロが入るようになりました。

このように上から下に打ってもネットより上を狙う直線であれば、ボールのスピードや回転を調整すればサービスボックスには入ります。むしろ下から上に打って速いサーブを入れるのはかなり無理があります。「直線で入らない=下から上に打て」ではちょっと短絡的かな、と思うところです。

ここまで書いておいてなんですが、私は高く弾ませたいスピンサーブの時だけは下から上のイメージで打っています。理由は高くから落とした方が高く跳ねるから(厳密にいうとバウンドの入射角が鈍角であるほど跳ねるから)。


スクリーンショット 2019-08-10 4.30.48

下から上に打つイメージでも実際は上から下に打っている人もたくさんいますし、最終的には本人が納得できるイメージで打てればいいとは思います。

それではまた、良いテニスライフを。

 

ゲームカウント4-4。
自分のサービスゲーム。
0-40
デュースに持ち込む為には3連続ポイントが必要。
0−40から、1点取って15−40から、2点取って30−40から、
あなたはどんなサーブを選択しますか?
スクリーンショット 2019-07-20 22.42.33
 

今日の話はメンタル・心理学の話です。
0−40という絶望的な状況でどんなプレーをするべきか、またどんなこと精神状態でいるのがベストなのか私なりの方法をお伝えしたいと思います。


0−40が起こる確率と挽回できる確率

スクリーンショット 2019-07-20 23.28.23
そもそも0−40はどのくらいの頻度で訪れるのでしょうか。
試合の展開や運を除いて純粋に確率だけで考えるとしたら、0−40になる確率はおおよそ12%〜5%くらいです。サーブ力があればあるほど0−40になりにくくなります(当たり前ですが)。

・2試合に1回くらい0−40になる 
・0−40になっても12%〜25%くらいは挽回できる

と思っておくといいと思います。


 
デュースまでの3ポイント分どんなサーブを打つか決めておく


0−40から打つサーブ、15ー40から打つサーブ、30−40から打つサーブ
どんなサーブを打つかは決めておくことをお勧めします。
後述しますが、私は微調整はあるものの3本ともファーストサーブ、入らなかった場合のセカンドサーブをどう打つか決めています。

重要なゲームで劣勢になると人間は混乱してしまいがちです。
特に試合経験が少ない人ほど混乱は大きくなります。
そして誤った判断をしてしまうのです。

だからこそ「0−40になった、じゃあこのパターンでいこう。だめならしょうがない。」という具合のいい意味での開き直り、諦観が必要なのです。

 
相手はきっとこう思っている


試合終盤の0−40、試合を決める絶好のチャンス。
相手はきっとこんなことを考えています。

・3回チャンスがあるからこのゲームは取れそうだ。
・1回くらいミスしても大丈夫だな。 
・セカンドサーブはダブルフォルトしないように安全に入れにくるだろうな。



要は心に余裕がある状態です。
無理して攻める必要もなく、チャンスボールがあれば思い切ったショットも打てるでしょう。

しかしこれが2本返して30−40になったらどうでしょうか。

・このポイントを取らないと。デュースにしたくない。
・このゲーム取れるはずだったのに、まずい。
・自分からミスしたくない。とにかくリターンを返そう。


まだリードにもかかわらず心が乱され始めるでしょう。
30−40の時点で精神的に優位に立てます。
 
万が一このゲームを逆転で取れたら相手のメンタルにかなりのダメージを与えることができます。

人間行動学のプロスペクト理論では人間は得たものよりも失ったものの方が2〜2.5倍影響を受けるという研究結果が出ています。
 
1万円を拾うことより一万円を落とすことの方が心に受ける影響は大きい、みたいなことです。

取れるはずのゲームを取れないと心のダメージは大きいのです。 

 
私がこの状況を迎えたら 


もし私が0−40になったらまずはセンターに60%くらいの確率で入るようなちょっとスライス気味のフラットでエースを狙いに行きます。セカンドになった場合も同じコースにちょっと回転を増やしてあわよくばエースを狙います。

スクリーンショット 2019-07-21 3.58.12
意図としては3ポイント連取するために攻撃的にいくぞ、という意思を相手に伝えることです。セカンドもファーストと同じコースを狙うのでミスしにくい。ファーストをセカンドの練習に使う感覚です。ちなみにこの後の2ポイントはエースは狙いません。あくまで印象付けをするためにこのサーブを打ちます。



15ー40になりました。
次に打つサーブはセンター気味にスピード重視のサーブ。70%くらいで入るようにあまりコーナーは狙いません。セカンドは逆にスピードが出ないように高く跳ねるスピンサーブを打ちます。
スクリーンショット 2019-07-21 4.13.03
意図は緩急をつけること。ファーストで速いスピードで打つことで相手に強打させず、あわよくばリターンミスを狙います。セカンドはあえて高く弾ませることを重視して打つことでタイミングをはずしにいきます。

30−40になりました。
最後は迷わずボディに打ちます。セカンドもスピード重視のトップスライスをボディに打ちます。
スクリーンショット 2019-07-21 4.26.34
ここまでくれば相手はいろいろ迷ってきていると思います。とことん迷わせます
0−40で打ったセンターも頭にあると思うので判断ミスを誘えるボディにしっかり打ち込むイメージで打ちます。回りこめるかどうか一瞬でも迷ってくれればOKです。


 と、こんな感じで私なら打ちます。
しかしこれはあくまで私の考えるパターンです。これが正解ではありません。


でも、0−40になったらどうするか、考えておくこと。

普段のサーブ練習で、そのパターンをしっかり練習しておくこと。

実戦で試してみること。

うまくいかなかったら他の方法を考えてみること。

うまくいったら覚えておくこと。

そして大事な試合で、うまくいったことを思い出してその通りにしてみる。



準備しておいて、損はありません。 

それではまた、よいテニスライフを。 

A君はサーブに悩んでいます。特にセカンドサーブは4回に1回(25%)しかポイント出来ません。そんなある日、枕元にテニスの神様が来てこう言いました。
IMG_0951
「お前に2つのうちどちらかのファーストサーブを授けよう。

①80%の確率で入り、そのうち60%の確率でポイントが取れるサーブ

②60%しか入らないが80%の確率でポイントが取れるサーブ

さあ、選ぶがよい。」



あなたならどちらを選びますか?




数学的テニスの考え方シリーズ、今日はサーブの確率編です。

80%で60%と60%で80%、なら同じじゃないの?

いいえ、これが違うんです。



では比べてみましょう。

仮にA君のサーブから100ポイント行うとします。

①の場合
ファーストサーブで得点
→100×80%×60%=48点
ファーストサーブで失点
→100×80%×40%=32点
セカンドサーブになる
→100-48-32=20点

②の場合
ファーストサーブで得点
→100×60%×80%=48点
ファーストサーブで失点
→100×60%×20%=12点
セカンドサーブになる
→100-48-12=40点


①も②もファーストサーブで48点取れるのは同じです。
しかしA君は25%で得点を取れるセカンドサーブを持っていますので、それを足してみましょう。

①の場合
ファーストサーブで得点
→100×80%×60%=48点
ファーストサーブで失点
→100×80%×40%=32点
セカンドサーブになる
→100-48-32=20点
セカンドサーブで得点
20×25%=5点
セカンドサーブで失点
20×75%=15点
得点48+5=53点
失点32+15=47点

②の場合
ファーストサーブで得点
→100×60%×80%=48点
ファーストサーブで失点
→100×60%×20%=12点
セカンドサーブになる
→100-48-12=40点
セカンドサーブで得点
40×25%=10点
セカンドサーブで失点
40×75%=
得点48+10=58点
失点12+30=42点

②の方が5点も多く得点を取れています。
ファーストサーブでの得点数が同じでも、セカンドサーブを打つ機会が多くなる分多く得点できるのです。
もし80%入るサーブで①と同じ58点取るためには66.25%得点する必要があります。



もちろんバランスは大事です。


100%ポイントが取れるサーブでも10%しか入らなければ
ファーストサーブで得点
→100×10%×100%=10点
セカンドサーブになる
→100-48-12=90点
セカンドサーブで得点
90×25%=22.5点
セカンドサーブで失点
90×75%=67.5点
得点10+22.5=33.5点
失点67.5点


得点は減ってしまいます。もし神様がこのサーブを提案してきたら丁重にお断りしてしましょう。





またどうせセカンドサーブで25%しか取れないなら、セカンドサーブも神様からもらったサーブを使ってみると


①の場合
ファーストサーブで得点
→100×80%×60%=48点
ファーストサーブで失点
→100×80%×40%=32点
セカンドサーブになる
→100-48-32=20点
セカンドサーブで得点
20×80%×60%=9.6点
セカンドサーブで失点
20×80×40%=6.4点
ダブルフォルト
20×20%=4点
得点48+9.6=57.6点(+4.6点)
失点32+6.4+4=42.4点

②の場合
ファーストサーブで得点
→100×60%×80%=48点
ファーストサーブで失点
→100×60%×20%=12点
セカンドサーブになる
→100-48-12=40点
セカンドサーブで得点
40×60%×80%=19.2点
セカンドサーブで失点
40×60%×20%=4.8点
ダブルフォルト
40×40%=16点
得点48+19.2=67.2点(+9.2点)
失点12+4.8+16=32.8点

どちらも得点は上がります。
16回もダブルフォルトしているのにこれだけ上がるのです。



もちろん究極には高確率で入って高確率でポイントを取れるサーブが理想です。
しかしその前段階ではとりあえず入れることより入った時いかにポイントを取れるかを重視するとサービスキープも楽にできるようになるでしょう。

以上を踏まえてサーブ練習ではこの優先順位で取り組んでみて下さい。

1.セカンドサーブの確率
セカンドが入らない人はファーストも入りません。まずは入れること。

2.セカンドサーブのポイント率
これがいつでも出来る、自分のサーブの根底になります。このポイント率が高いならセカンドサーブを2本続けて打つことも有効な作戦になります。

3.ファーストサーブのポイント率
セカンドサーブよりポイントが取れるように工夫します。別に必ずしもスピードを上げろ、と言っている訳ではありません。スピード以外にもコース、回転、サービスダッシュなどの戦術などを工夫してポイント率を高めます。

4.ファーストサーブの確率
高いポイント率をキープしながら確率を高めていきます。重要なのは「セカンドサーブよりどれだけ有効に打てるか」です。

テレビで解説者がファーストの確率が落ちています、と言うのを聞いたことがあるかもしれませんが、もし50%しか入っていなくても80%近くポイントできているなら大した問題ではありません。もし80%入っていても50%しかポイント出来ていなければその方が問題なのです。




これからサーブを練習するときには4つのどれの練習か意識しましょう。
「今はセカンドを入れる練習」「ファーストでポイントを取る練習」のように目的をはっきりして行うと劇的に上達すると思います。


それではまた、よいテニスライフを。

ダブルス、シングルスのどちらでも必ず巡ってくるサービスゲーム。
苦手な方いませんか?

今日はそんなあなたに
「サービスゲームの第1ポイント」
をどこに狙うべきかお教えします。


まず、前提として第1ポイントはデュースサイドです。
そしてデュースサイドには左利き同士のペアでない限りほぼ右利きが入ります。
(ジェイミーマレーやブライアン兄弟などプロレベルに近づくほど左利きがデュースサイドになりますが、一般のオープン大会レベルを想定しているので、今回は触れません)

要するにデュースサイドで、右利きに打つサーブが前提です。


結論からいうと
「相手のバック気味に8割くらいのスイングで少しトップスピン回転をかけたフラットサーブ」
を打つべきです。(下図参照)
サーブのコース.001
このサーブを打つメリット

⚫️ネットしにくい
ネットの一番低いところ付近を狙うので、高さに余裕がある。

⚫️サイドミスしにくい
完全なバック狙いだとセンターラインの右に出る可能性が増えます。
試合の初めの暖まっていないときに狙うべきではありません。

 ⚫️しっかりラケットを振っていける
スピード重視のフラットだと確率が下がるのを少し縦回転をいれることで入る可能性が上がる。
試合の後半にスイングスピードを上げるのは難しいので、序盤に8割くらいで振っておきたい。

⚫️重要な布石になる
 このサーブを打つと、相手のリアクションが2つでてきます。
それを見て、試合の後半の重要ポイントでポイントを取れるサーブを温存できます。

1、そのままバックハンドで返してきたら

スペシャルプレー
同じようなコース、同じようなスピードで少しだけスライス回転をかけて打つ。
サーブのコース.002
相手は同じサーブだと思いバックで返そうとするが、スライスの分近づいてくるので、ミスヒットしやすくなる。

2、フォアに回り込んで打ってきたら

サイドに切れるスライスを混ぜましょう。これでエースが1本でも取れれば相手のポジションがかわるかもしれません。
サーブのコース.003
あまり厳しく狙わなくても良い。



まとめ

コーナーへの打ち分けの練習は重要ですが、サービスゲームを安定させるには
「高確率でそこそこの効果を与えるファーストサーブ」
があるほうが個人的には重要かと思います。

 

↑このページのトップヘ