テニスのツボ

超理系な現役テニスコーチによるテニス情報ブログです。 「誰かに話したくなる」ようなテニス雑誌にも載っていないような 超マニアックなことをお伝えしていきます。 トッププロの情報や自身の選手活動も定期的に更新中です。

タグ:サーブ


ウィンブルドン見てますか?けいコーチです。

大坂なおみは残念ながら敗退、錦織圭はこの記事を書いている段階で4回戦勝利したところです。
誰が優勝するのか楽しみですね。


ウィンブルドンといえば「サーブ」が大きなウェイトを占めると言われるグラスコートでの大会ということで、今回はサービスキープについての考え方をデータを見ながら一緒に考えていけたら、と思います。


ところで錦織圭はよく

サーブが弱い

と言われることが多いです。


個人的にはあの身長でできる限りのことはやっていると思っているのですが、錦織圭のサービスゲームは本当のところどうなのか。
ビッグ3との差はなんなのか。
他のサーブが得意な選手はどんなサービスゲームを行っているのか。
列挙していきます。

まず、錦織のサービスデータです。
(データはATP公式から引っ張ってきたのですが、小数点以下の確率が出てこないため、サービスポイント率等は実際の値と若干の誤差がでることをご了承ください)

 スクリーンショット 2019-07-06 23.04.25

[表の見方]
1stサーブで得点した割合
1stサーブで失点した割合
2ndサーブで得点した割合
2ndサーブで失点した割合 

赤とオレンジを足したのがサーブで取れた得点です。
サービスポイント率は約64%、サービスキープ率は80%となっています。

これはツアーの中でどのくらい優れているかというと、過去52週でツアーでそれなりの試合数をこなしている79選手中32位と半分よりはいいくらいの数字と思って間違いではないと思います。(ちなみに日本の西岡は79選手中70位、ダニエル太郎は78位です)


ではビッグ3の数字と比べてみましょう。
スクリーンショット 2019-07-06 23.31.42
1st確率、1st得点率、2nd得点率の全てでわずかに上回り錦織よりも約3%多くポイントを取っています。錦織の上位互換といった性能です。

スクリーンショット 2019-07-06 23.36.20
ナダルの特徴は1stサーブの確率。2ndの得点率が高いのでもっと1stでポイントを取りに行ってもいいように思いますが、おそらくラリー戦に持ち込みたいという意図が大いに現れているデータだと思います。

スクリーンショット 2019-07-06 23.41.09

ビッグ3の中では1番キープ率の高いフェデラー。特筆すべきは1stの得点率。入る確率は錦織と同水準ですが、ポイント率が驚異的に高いので高いキープ率を維持しています。サービスゲームの戦術としてはナダルと対極にあると言えます。



次は現役でサーブが一番強い選手のデータです。

スクリーンショット 2019-07-06 23.46.53

ナダル並みの高確率で入れながらフェデラー以上にポイントする、1stだけで55%近くポイントする現役最高サーバーです。
なぜこんなにポイントが取れるのか。
ほぼ「身長が高いから」という理由で説明がついてしまいます。

イズナーは身長が208cmもあり、普通はフラットで狙うことが困難なワイドに軽々とフラットサーブでエースを量産します。特に高速で打ってもネットしにくいのは身長のアドバンテージが大きいです。


ここまで紹介した選手を含めサービスランキング32位の錦織より上の選手は、ほぼ錦織より高身長の選手です。
しかし1人だけ錦織と同じ身長でサービスランキング上位の選手がいます。

スクリーンショット 2019-07-06 23.58.01

彼も錦織と同じ178cmです。サービスのデータでわずかに違うのは
1st、2nd共に錦織より1%ポイント率が高い。
でも1stは錦織より1%入らない

これだけでサーブキープ率に2%もの差が出ているのです。

ちなみに実測値でなく理論値でも1.4%キープ率が変わります。

        コールシュライバー
スクリーンショット 2019-07-07 0.05.21

           錦織
スクリーンショット 2019-07-07 0.06.17
※右の数値が理論上キープできる確率です。

ポイント率を上げる、というのは先日の
ファーストサーブは確率と決定率のどちらが大事か
の記事でも触れましたが、決定率を上げるという意味ではコールシュライバーはかなりいいヒントになるのではないかと思います。



最後に決定率がよくてもゲームが取れない選手
 
スクリーンショット 2019-07-07 1.19.29

1stが入った時はナダル、ジョコビッチよりも決定力がありエースを量産しますが、いかんせん確率が悪すぎです。2ndも入れに行ったりダブルファーストを打ってみたり工夫はしていますが5割に満たないポイント率です。
ちなみにペールはサービスランキングで79選手中76位です。 



いかがだったでしょうか。プロだから打てるサーブ、もちろんそれは大きいのですが、ポイントを取る意識や考え方は皆さんのプレーにも必ず役に立つと思います。
スクリーンショット 2019-07-07 1.37.31




それではまた、よいテニスライフを。 

A君はサーブに悩んでいます。特にセカンドサーブは4回に1回(25%)しかポイント出来ません。そんなある日、枕元にテニスの神様が来てこう言いました。
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「お前に2つのうちどちらかのファーストサーブを授けよう。

①80%の確率で入り、そのうち60%の確率でポイントが取れるサーブ

②60%しか入らないが80%の確率でポイントが取れるサーブ

さあ、選ぶがよい。」



あなたならどちらを選びますか?




数学的テニスの考え方シリーズ、今日はサーブの確率編です。

80%で60%と60%で80%、なら同じじゃないの?

いいえ、これが違うんです。



では比べてみましょう。

仮にA君のサーブから100ポイント行うとします。

①の場合
ファーストサーブで得点
→100×80%×60%=48点
ファーストサーブで失点
→100×80%×40%=32点
セカンドサーブになる
→100-48-32=20点

②の場合
ファーストサーブで得点
→100×60%×80%=48点
ファーストサーブで失点
→100×60%×20%=12点
セカンドサーブになる
→100-48-12=40点


①も②もファーストサーブで48点取れるのは同じです。
しかしA君は25%で得点を取れるセカンドサーブを持っていますので、それを足してみましょう。

①の場合
ファーストサーブで得点
→100×80%×60%=48点
ファーストサーブで失点
→100×80%×40%=32点
セカンドサーブになる
→100-48-32=20点
セカンドサーブで得点
20×25%=5点
セカンドサーブで失点
20×75%=15点
得点48+5=53点
失点32+15=47点

②の場合
ファーストサーブで得点
→100×60%×80%=48点
ファーストサーブで失点
→100×60%×20%=12点
セカンドサーブになる
→100-48-12=40点
セカンドサーブで得点
40×25%=10点
セカンドサーブで失点
40×75%=
得点48+10=58点
失点12+30=42点

②の方が5点も多く得点を取れています。
ファーストサーブでの得点数が同じでも、セカンドサーブを打つ機会が多くなる分多く得点できるのです。
もし80%入るサーブで①と同じ58点取るためには66.25%得点する必要があります。



もちろんバランスは大事です。


100%ポイントが取れるサーブでも10%しか入らなければ
ファーストサーブで得点
→100×10%×100%=10点
セカンドサーブになる
→100-48-12=90点
セカンドサーブで得点
90×25%=22.5点
セカンドサーブで失点
90×75%=67.5点
得点10+22.5=33.5点
失点67.5点


得点は減ってしまいます。もし神様がこのサーブを提案してきたら丁重にお断りしてしましょう。





またどうせセカンドサーブで25%しか取れないなら、セカンドサーブも神様からもらったサーブを使ってみると


①の場合
ファーストサーブで得点
→100×80%×60%=48点
ファーストサーブで失点
→100×80%×40%=32点
セカンドサーブになる
→100-48-32=20点
セカンドサーブで得点
20×80%×60%=9.6点
セカンドサーブで失点
20×80×40%=6.4点
ダブルフォルト
20×20%=4点
得点48+9.6=57.6点(+4.6点)
失点32+6.4+4=42.4点

②の場合
ファーストサーブで得点
→100×60%×80%=48点
ファーストサーブで失点
→100×60%×20%=12点
セカンドサーブになる
→100-48-12=40点
セカンドサーブで得点
40×60%×80%=19.2点
セカンドサーブで失点
40×60%×20%=4.8点
ダブルフォルト
40×40%=16点
得点48+19.2=67.2点(+9.2点)
失点12+4.8+16=32.8点

どちらも得点は上がります。
16回もダブルフォルトしているのにこれだけ上がるのです。



もちろん究極には高確率で入って高確率でポイントを取れるサーブが理想です。
しかしその前段階ではとりあえず入れることより入った時いかにポイントを取れるかを重視するとサービスキープも楽にできるようになるでしょう。

以上を踏まえてサーブ練習ではこの優先順位で取り組んでみて下さい。

1.セカンドサーブの確率
セカンドが入らない人はファーストも入りません。まずは入れること。

2.セカンドサーブのポイント率
これがいつでも出来る、自分のサーブの根底になります。このポイント率が高いならセカンドサーブを2本続けて打つことも有効な作戦になります。

3.ファーストサーブのポイント率
セカンドサーブよりポイントが取れるように工夫します。別に必ずしもスピードを上げろ、と言っている訳ではありません。スピード以外にもコース、回転、サービスダッシュなどの戦術などを工夫してポイント率を高めます。

4.ファーストサーブの確率
高いポイント率をキープしながら確率を高めていきます。重要なのは「セカンドサーブよりどれだけ有効に打てるか」です。

テレビで解説者がファーストの確率が落ちています、と言うのを聞いたことがあるかもしれませんが、もし50%しか入っていなくても80%近くポイントできているなら大した問題ではありません。もし80%入っていても50%しかポイント出来ていなければその方が問題なのです。




これからサーブを練習するときには4つのどれの練習か意識しましょう。
「今はセカンドを入れる練習」「ファーストでポイントを取る練習」のように目的をはっきりして行うと劇的に上達すると思います。


それではまた、よいテニスライフを。

ダブルス、シングルスのどちらでも必ず巡ってくるサービスゲーム。
苦手な方いませんか?

今日はそんなあなたに
「サービスゲームの第1ポイント」
をどこに狙うべきかお教えします。


まず、前提として第1ポイントはデュースサイドです。
そしてデュースサイドには左利き同士のペアでない限りほぼ右利きが入ります。
(ジェイミーマレーやブライアン兄弟などプロレベルに近づくほど左利きがデュースサイドになりますが、一般のオープン大会レベルを想定しているので、今回は触れません)

要するにデュースサイドで、右利きに打つサーブが前提です。


結論からいうと
「相手のバック気味に8割くらいのスイングで少しトップスピン回転をかけたフラットサーブ」
を打つべきです。(下図参照)
サーブのコース.001
このサーブを打つメリット

⚫️ネットしにくい
ネットの一番低いところ付近を狙うので、高さに余裕がある。

⚫️サイドミスしにくい
完全なバック狙いだとセンターラインの右に出る可能性が増えます。
試合の初めの暖まっていないときに狙うべきではありません。

 ⚫️しっかりラケットを振っていける
スピード重視のフラットだと確率が下がるのを少し縦回転をいれることで入る可能性が上がる。
試合の後半にスイングスピードを上げるのは難しいので、序盤に8割くらいで振っておきたい。

⚫️重要な布石になる
 このサーブを打つと、相手のリアクションが2つでてきます。
それを見て、試合の後半の重要ポイントでポイントを取れるサーブを温存できます。

1、そのままバックハンドで返してきたら

スペシャルプレー
同じようなコース、同じようなスピードで少しだけスライス回転をかけて打つ。
サーブのコース.002
相手は同じサーブだと思いバックで返そうとするが、スライスの分近づいてくるので、ミスヒットしやすくなる。

2、フォアに回り込んで打ってきたら

サイドに切れるスライスを混ぜましょう。これでエースが1本でも取れれば相手のポジションがかわるかもしれません。
サーブのコース.003
あまり厳しく狙わなくても良い。



まとめ

コーナーへの打ち分けの練習は重要ですが、サービスゲームを安定させるには
「高確率でそこそこの効果を与えるファーストサーブ」
があるほうが個人的には重要かと思います。

 

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