テニスのツボ

超理系な現役テニスコーチによるテニス情報ブログです。 「誰かに話したくなる」ようなテニス雑誌にも載っていないような 超マニアックなことをお伝えしていきます。 トッププロの情報や自身の選手活動も定期的に更新中です。

タグ:スライス

ウィンブルドン準々決勝ですが、残念ながら錦織選手がフェデラーに6-4 1-6 4-6 4-6で破れてしまいました。
しかしグランドスラム5大会連続でベスト8進出と決して悪い結果ではありません。これから始まるハードコートシーズンで頑張って欲しいものです。


第1セット、錦織選手が優勢だったのですが、第1セットに限らず特にうまくいっていたパターンは
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クロスコートの打ち合いからストレートに展開し
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クロスに帰ってきた球を
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高い打点でクロスorダウンザラインに強打


このパターンになったときはかなりの確率で錦織選手のポイントになっていました。


しかしここでフェデラーが織り交ぜてきたのはバックハンドのスライス、しかも短めのスライスをフォア側に返球してきたのです。
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そして錦織選手はそのボールを攻めることができず、つなぐだけになったりミスが多くなってしまいました。


スライスは深く打つ、というように教わった方が多いと思いますが、短めのスライスもメリット・デメリットがありますがかなり効果的なショットです。

短いスライスのメリット
 

●強打がしにくい

ネットとの距離が近くなる程ボールを上に持ち上げないとネットを越えません。同じ膝下くらいの打点の場合ベースラインの後ろからだと3.5度程上に打てばネットを越えますが、デッドゾーン付近だと6.5度程上に打たないといけないので強打がしにくくなります。
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●少ない力で打てる

深いボールを打つには約24メートル飛ばさないといけないですが、サービスラインまでなら約18メートルでいいので少ない力で打てます。

●中途半端な場所におびき出せる

デッドゾーンという不安定な場所で打たせ、その次のショットをより効果的にできます。
相手が下がるようなら深いボールで前後にゆさぶり
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アプローチしてくるならパッシングでポイントしやすくなります。
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短いスライスのデメリット



●浮くとピンチになる
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打点が腰よりも上になるようなら角度のメリットがなくなり強打しやすくなります。浮いてしまっても深ければピンチ度は減少します。

●単純に難易度が高い

深く打つのに比べてネットの低い所を通さないと低く弾む効果的なボールになりません。
特にストレートに低く打つのはネットが高いので難しいです。 


打ち方と注意点


●高い打点で打つ

高い打点からの方が直線的な軌道で打てるのでより低く打てます。

●相手の力を使う(振り切らない)
ラケットを振り切ると距離が出てしまいやすいです。ボレーのようにコンパクトなスイングで回転をかけると短くなります。ボレーで深く打とうとしたのに短くなって相手が取れず「すいませ〜ん」ってときありますよね?あの感覚です。

●グリップが厚い相手に効果的
グリップが厚いほど低いボールの処理が難しくなるので効果的です。錦織選手はグリップがかなり厚いので苦労していました。


●重要なポイントで使う
距離が短いので多用すると相手は慣れ、前にポジションを移してきてしまいます。普段は深いスライスを使い、大事なポイントで使うと効果が大きいです。

例を挙げるとフェデラーvsナダルの準決勝(2019全英)の第4セットでフェデラーが5−4のサービングフォーザマッチを迎えました。しかしナダルが食い下がりブレークポイント。ここでブレークを許すと5−5となり一気にどうなるかわからなくなってしまう局面で、このセットほぼ使っていなかった短いスライスをストレートに展開し、ナダルはバックハンドをネットにかけブレークポイントを逃しそのまま決着しました。


まとめ
深いボール=チャンス、浅いボール=ピンチという認識しかないと、本当はチャンスだったのを見逃してしまうかもしれません。どんなボールが相手に効果的なのか、いろいろ研究してみると面白いですよ。


それではまた、よいテニスライフを。 

昨日のストロークとボールの軌道に続いて、テニスを科学するシリーズ。


ナダルのスピン、めちゃ跳ねますよね。
フェデラーのスライス、糸を引くように低く滑ります。
ティエムのスピンサーブ、肩より高く跳ねています。

私たちはこれらと同じスピード、同じスピンででボールを打つことはできません。

あれだけのボールを打つためにはかなりのスイングスピードでラケットを振る必要があるからです。



しかしあなたにもナダルくらいの高さまで跳ねるスピンを打つことは出来ます。



まず回転をかけたボールがどのように跳ねるのか理解しましょう。

まずはボールをトップスピンをかけて真下に落とします。
回転をかけた分だけ本来よりも 進行方向に進みます。
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回転量を増やすとボールが弾む高さは低くなります。
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同じようにスライス回転をかけて落とすと進行方向と逆に進みます。
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スライスでも回転を多くすればするほどボールの弾む高さは低くなります。



また少し落とす角度を変えてもトップスピンは進行方向に、スライスは逆方向に進みます。
回転をかけないと点線のように跳ねるはずですが、それよりも進行方向に向かって跳ねます。
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さてここからが本題です

次に実際にボールを打った時と近くなるように45度の入射角になるようにボールを落とします。
回転をかけないとこう弾みますね。
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次にトップスピンをかけてみます。
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本来跳ねるはずの位置よりも進行方向に向かって跳ねます。
打球の方向と回転の方向が一致しているので少し加速して跳ねます。

でもちょっと図を見直してください。


これ、回転かかってないほうが高く跳ねていませんか?

 
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そうなんです。回転をかけるから高く跳ねるのではないのです。


では、なぜナダルのトップスピンはあんなに跳ねるのでしょうか。


答えは、ボールの入射角です。 

ナダルのスピンを横から見るとこんな感じの軌道を描いています。

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 まずナダルのボールは高い軌道でネットを越えた後、マグヌス効果でボールは急降下します。それによって地面に落ちる時にはかなり上から下に落ちます。この角度を水色の三角形で表しています。もし回転がかかっていなければ水色の線に沿うように跳ねるはずですがトップスピンの分だけ進行方向に進みます。

対して跳ねないスピンはこんな感じです。
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入射角が小さいので跳ねる高さは低くなってしまいます。

もちろんこれはこれでアリです。速いスピンのかかったボールは相手の腰の高さまでしか弾まなくても大きな武器です。これだけ打ち続けてもなんの問題もないでしょう。

ただ、高く跳ねるスピンは是非覚えていてほしいです。
理由はディフェンスの場面でものすごく役に立つから

では高く跳ねるスピンの打ち方です。
打ち方は簡単。このイメージで打つだけ。 
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そう、一般に言われる中ロブに近いボールです。
ベストのイメージは「相手の肩より高く弾むけど、グランドスマッシュを打つには難しいボール」です。
このボールを特にうまく使っているなー、と私が思うのは
男子だとアンディ・マレー
女子だと奈良くるみ

この2人はラリーの中でこのボールを織り交ぜることで後ろに下げさせたり、力の入らない打点で打たせたりすることで、不利な状況から攻勢に転じるのが抜群にうまいです。
 
もし興味があれば動画を探してみることをお勧めします。


では低く滑るスライスを打つには?

ここまで読んで下さった方はもうわかりますね。
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低く打って入射角を小さくすればいいのです。この時バウンドは本来弾むはずの高さより高くなりますが、進行方向と逆の回転で相殺されて「低く滑ってくる」軌道になります。
また、スライスはマグヌス効果によって距離が伸びますので、ボールの頂点はネットの手前に設定しましょう。
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このような高いスライスは入射角が大きいので高く弾み、なおかつ進行方向と逆の回転で威力が低下するチャンスボールになってしまうので、あまり使わないようにしましょう。(使い道はありますが、それはまた今度にでも)



まとめ
まずはボールを打つ時に相手コートにどのように入っているのか観察してみましょう。
高く弾む、低く滑る、それぞれを使いたい時に使えるように、練習してみましょう。


それではまた、よいテニスライフを。 

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