テニスのツボ

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タグ:練習法

テニスの試合中や、大会のサイトでスタッツって見れますよね。
スクリーンショット 2019-08-16 22.43.40
こんな感じの。
ちなみにこれは先日のシンシナティ2回戦のスタッツです。
西岡が7−6(2) 6−4で勝利した試合です。
これを見るとおおよそ西岡の方がサーブが安定していたんだな、とか試合は競っていたけどトータルだと結構差が付いているな、とか分かります。

でも、このスタッツではどこのサイトを調べても私が本当に知りたいデータは出てきませんでした。



私が知りたいこと。それは
テニスで1試合やるとそれぞれのショットをどれだけ打つのか



つまり、1試合でストロークを何回、サーブを何回、ボレーを何回打つのか調べればそれに応じた割合で練習すると効率的なんじゃないかと思ったのです。

調べても分からないなら自分で数えてみよう、と思い1試合丸々観戦しながら調べてみました。

今回調べた試合

 今回調べた試合は次の2試合です。

・2019モントリオール(マスターズ1000)
2回戦 錦織圭7−6(6) 2−6 (5)6−7R.ガスケ
 錦織圭がマッチポイントを握りながら惜敗した試合。

・2019シンシナティ(マスターズ1000)
2回戦 錦織圭(2)6−7 4−6西岡良仁
錦織と西岡の初対戦で西岡が終始優勢に進めた勝利した試合。

この2試合のデータを調べてみました。

データの取得方法

先ほど書いた通り、私が欲しいデータはどこにも出てきません。

であれば調べる方法は一つ。

 スクリーンショット 2019-08-16 22.02.19
試合を見ながらエクセル(numbers)に手入力です。

サーブを打ったのは誰か、ファーストサーブが入ったか、ラリーがどのように終わったか、ラリーが何回続いたかを入力するとなんやかんや計算され自動でスコアやポイント取得者などが計算されるようになっています。 

ラリーが続いた回数は、プレーヤーが触った数として計算しています。
サービスエースならサーバーしか触っていないので1回
サーブをリターンが返せなければ2回といった数え方です。

プレーヤーが打った数は何回か

 [錦織vsガスケ]

トータルポイント
錦織121 ガスケ124 合計225 

総打球数

錦織629 ガスケ609 合計1238


 [錦織vs西岡]

トータルポイント
錦織68 西岡79 合計147 

総打球数

錦織383 西岡353 合計736

ガスケ戦は3セットだった上にタイブレークが2回だったのに対して、西岡戦は2セットで終わったのでトータルポイント、総打球数も増えています。

この2試合で行われた5セットを5で割ると1セットマッチ当たりの平均が出ますね。

(225+147)÷5=74.4 
(1238+736)÷5= 394.8

つまり1セットマッチだと74ポイントくらいで終わって、395回くらい打つ(1人あたり198回くらい打つ)ということが分かりますね。もちろん2試合しか検証していないですし、プレースタイルによっても変わるでしょう。

なぜ2人の総打球数に差が出るのか

テニスは2人で交互に打つスポーツなのにガスケ戦は20回、西岡戦は30回も多く錦織は打っています。
考えられる原因は4つあります。

[悪い要因]
・ファーストが入らない
・ミスが多い
ファーストが入らないとセカンドを打たないといけないのでその分打球が増えます。またミスをすると相手は打たずにポイントが終わるので同じく打球が増えます。

[良い要因] 
・サービスエースが多い
・ウイナーが多い
相手に触らせずに決めればその分こちら側の打球は増えます。これは多くてもいい要因ですね。

要するに「良くも悪くも自分が原因で終わるポイントが多いと打球数は相手より増える」ということです。言い換えれば攻撃的なテニスは相手より多く打つ必要がある、とも言えます。

スクリーンショット 2019-08-17 0.32.57
ガスケ戦はファーストの確率は上回っていたのですが、ウイナー、ミスはガスケより多く、西岡戦はファーストの入りもウイナー、凡ミスも上回った結果錦織は相手より多く打っています。
(凡ミス=アンフォースドエラー、ミス=フォースドエラーです。入力が大変なのでこの表記にしています。) 

打球数が多くてもウイナー、エースが多ければ勝てますし 、これは試合の結果には関係ない指数ですので、そこは間違えないようにしましょう。


どのショットを何回打ったか 

 ではいよいよどのショットを何回打ったか計算してみたいと思います。
まずはガスケ戦の錦織選手の打ったショットです。上の表と見比べながら見てください。

・ファーストサーブ
自分のサーブでは必ずファーストサーブを打ちますのでサーブ総数の128回がファーストサーブを打った数です。

・セカンドサーブ
 表の通り45回です。

・サービスリターン
リターンを触った数で考えるなら相手が打ったサーブの総数からサービスエースとダブルフォルトを引いた数です。サービスエースとダブルフォルトはこちらは触りませんからね。
サーブの総数117回から表にはありませんがサービスエース11回とダブルフォルト3回を引いた103回がリターンをした数です。 ファーストとセカンドに分けるならファースト51回、セカンド52回となります。

・ボレー 、スマッシュ
 フォアボレー4回、バックボレー5回、スマッシュ2回でした。今回の計測では「最後に触ったショット」を対象としたので「スマッシュを打ったけど返された」みたいなのはカウントされていません。ただボレー、スマッシュは半数以上は触られずに決まるので、概算ですがフォアボレー8回、バックボレー10回、スマッシュ4回とします。

・ストローク
総打球数の629からサーブ、リターン、ボレー、スマッシュを引いたのがストロークを打った数です。それぞれ引くと331回です。フォアハンドとバックハンドの比率は概算ですが
フォア:バック=4:5
でしたのでフォアハンド147回、バックハンド184回 とします。

つまり錦織選手が打ったボールは多い順に
バックハンド184回
フォアハンド147回
ファーストサーブ128回
リターン103回
セカンドサーブ45回
バックボレー10回
フォアボレー8回
スマッシュ4回
ということです。

ガスケ、西岡の比率

同じ計算方法でガスケ、西岡、西岡戦の錦織も調べてみます。
スクリーンショット 2019-08-17 1.56.39
これだけ見てもなんだか分かりませんね。

そもそも私が知りたかったのは
「1試合やるとどのショットをどのくらい打つのか」
でした。

そこでショットを「サーブ」「リターン」「ストローク」「ボレー・スマッシュ」の4系統に分け、平均を取ってみました。

1セットマッチの各ショットの回数


スクリーンショット 2019-08-17 2.12.08
1セットマッチをやると、ストロークは101回、サーブ55回、リターン36回、ボレー6回くらいする計算になります。割合にすると
サーブ   28%
リターン     18%
ストローク 51%
ボレー    3% 
となります。思ったよりサーブとリターンの比率が高いので、練習時間の4割くらいはサーブリターンに充てるといいのかな、とも思います。


まとめ
今回はシングルスで調べてみましたが、ダブルスだともっとボレーの比率が増えるでしょうし機会があれば調べてみたいと思います。めっちゃしんどそうだけど・・・。

それではまた、よいテニスライフを。

今から2つの質問をします。
①あなたはストロークをミスなく打てますか?
強く振りすぎてアウトをしてしまったり、思ったような回転がかけられなかったり、フレームに当ててしまうことはありませんか?


あまり出来ない方、大体できるけど相手のボールが速かったり走りながら打ったりすると出来ない方などいらっしゃると思います。

では次の質問

②あなたはペットボトルの水をうまく飲むことが出来ますか?
キャップを逆に回してしまったり、強く握りすぎて中身が溢れ出てしまったり、口に入れようとしたら間違って鼻に入れてしまったりすることはありませんか?



ほとんどの方は出来ると思います。恐らくちょっとくらい蓋が固くても開けられるでしょうし、(マナーは別として)揺れる電車内でも出来るでしょう。目をつぶりながらでも出来ると思います。利き手と逆でも出来る方がほとんどでしょう。


ではなぜあなたはペットボトルの水はミスなく飲めるのにテニスではミスをしてしまうのでしょう。


それはストロークの動作における「再現性」が低いからです。



再現性(さいげんせい)とは、同一の特性が同一の手法により発現するとき、その結果の一致の近さのことである
※ウィキペディアより



簡単に言うと同じことをどのくらい同じようにできるか、ということ。


テニスの場合ボールの相手のボールの速さ、回転などを見て相手のポジションなどを確認してから自分の打つボールの速さ、回転などを決めるという複雑さからどうしても再現性を高めるのは難しいスポーツです。


では再現性を高めるためにはどうしたらいいのか。いくつかポイントをお教えいたします。


1.動かす場所を最小限にする

ストロークでは動作を組み合わせるほど複雑な動きになり再現性を高める(同じ動作をする)ことが難しくなります。
「体を回して」「ボールに踏み込みながら」「手首をパームアウトして」などいろいろ組み合わせるのは難しい技術なのです。


また、あるテニス関係の物理学者は直線運動に比べて回転運動は計算がとても難しいのでテニスの動作も出来るだけ直線運動にすることが望ましい、と述べています。

つまり「体を回して」より「ラケットを後ろから前に」の方が簡単。
「手首を返して」より「手首を固めて」の方が簡単、ということです。

ペットボトルの蓋も回転させないと開かないのですが、これが上に上げるだけ(直線運動)で開く構造だったら簡単に開きすぎて鞄の中でこぼれてしまうので、あえて難しい回転運動を要求しているのだと思います(多分)

テニスも簡単なボールはともかく厳しいボールが来た時には出来るだけシンプルな打ち方をするようにしましょう。



2.動きのことを意識しない

ペットボトルの蓋はどちらに回すと開きますか?時計回り?反時計回り?

正解は反時計回りですが、そのことを意識して
開けないのではないでしょうか。

なぜ意識しないで出来るかというと動きが体に身についているからです。
回す方向も、ペットボトルを潰さずに握る力加減も、何回も行ううちに体が慣れてきているのです。


テニスも同じで動作を繰り返し行うことで体が慣れて意識せずに同じ動作を出来るようになります。

ある程度出来てきたら打ち方のことは意識しないようにしましょう。



3.結果を確認する

皆さんは1球1球ボールがどこに落ちたか確認していますか?

これが一番出来ていない方が多いと思います。


人間は体に起きたことは基本的に脳にインプットされます。
今の力加減で打ったら、どのくらい飛んだか。
今のスイング方向で打ったらネットのどのくらいを通ったか。
全て脳は覚えているのです。
そしてあなたが意識しなくても潜在的な「もう一人の自分」がだんだん目標に近づけてくれるのです。

※このあたりはティモシー・ガルウェイ著のインナーテニスという本に詳しく書いてあるので興味があればお買い求め下さい。

しかしその軌道や着弾点を見ておかないと正しい記憶として脳に定着しません。

「ネット」や「アウト」や「ナイスショット」というのは線が引いてあったり、網が仕掛けられているから起こるただの結果です。

正確に脳に覚えさせるのに「ああ、飛びすぎた」「ネットした」だけを記憶するのはもったいないです。

正確に何センチまで意識せずとも「ラケット1本分サイドだった」「ボール2個分ネットだった」「ロールスロイス1台分アウトだった」くらいでいいのでボールの行方を見る癖をつけましょう。




まとめ
テニスは8割勝てる人でも100回のうち45回はミスするスポーツです。
ミスをすることは悪いことではありません。
そのミスをだんだん減らしていくために、また次に生かしていくためにこの3つのことを覚えておきましょう。



それではまた、よいテニスライフを。

A君はサーブに悩んでいます。特にセカンドサーブは4回に1回(25%)しかポイント出来ません。そんなある日、枕元にテニスの神様が来てこう言いました。
IMG_0951
「お前に2つのうちどちらかのファーストサーブを授けよう。

①80%の確率で入り、そのうち60%の確率でポイントが取れるサーブ

②60%しか入らないが80%の確率でポイントが取れるサーブ

さあ、選ぶがよい。」



あなたならどちらを選びますか?




数学的テニスの考え方シリーズ、今日はサーブの確率編です。

80%で60%と60%で80%、なら同じじゃないの?

いいえ、これが違うんです。



では比べてみましょう。

仮にA君のサーブから100ポイント行うとします。

①の場合
ファーストサーブで得点
→100×80%×60%=48点
ファーストサーブで失点
→100×80%×40%=32点
セカンドサーブになる
→100-48-32=20点

②の場合
ファーストサーブで得点
→100×60%×80%=48点
ファーストサーブで失点
→100×60%×20%=12点
セカンドサーブになる
→100-48-12=40点


①も②もファーストサーブで48点取れるのは同じです。
しかしA君は25%で得点を取れるセカンドサーブを持っていますので、それを足してみましょう。

①の場合
ファーストサーブで得点
→100×80%×60%=48点
ファーストサーブで失点
→100×80%×40%=32点
セカンドサーブになる
→100-48-32=20点
セカンドサーブで得点
20×25%=5点
セカンドサーブで失点
20×75%=15点
得点48+5=53点
失点32+15=47点

②の場合
ファーストサーブで得点
→100×60%×80%=48点
ファーストサーブで失点
→100×60%×20%=12点
セカンドサーブになる
→100-48-12=40点
セカンドサーブで得点
40×25%=10点
セカンドサーブで失点
40×75%=
得点48+10=58点
失点12+30=42点

②の方が5点も多く得点を取れています。
ファーストサーブでの得点数が同じでも、セカンドサーブを打つ機会が多くなる分多く得点できるのです。
もし80%入るサーブで①と同じ58点取るためには66.25%得点する必要があります。



もちろんバランスは大事です。


100%ポイントが取れるサーブでも10%しか入らなければ
ファーストサーブで得点
→100×10%×100%=10点
セカンドサーブになる
→100-48-12=90点
セカンドサーブで得点
90×25%=22.5点
セカンドサーブで失点
90×75%=67.5点
得点10+22.5=33.5点
失点67.5点


得点は減ってしまいます。もし神様がこのサーブを提案してきたら丁重にお断りしてしましょう。





またどうせセカンドサーブで25%しか取れないなら、セカンドサーブも神様からもらったサーブを使ってみると


①の場合
ファーストサーブで得点
→100×80%×60%=48点
ファーストサーブで失点
→100×80%×40%=32点
セカンドサーブになる
→100-48-32=20点
セカンドサーブで得点
20×80%×60%=9.6点
セカンドサーブで失点
20×80×40%=6.4点
ダブルフォルト
20×20%=4点
得点48+9.6=57.6点(+4.6点)
失点32+6.4+4=42.4点

②の場合
ファーストサーブで得点
→100×60%×80%=48点
ファーストサーブで失点
→100×60%×20%=12点
セカンドサーブになる
→100-48-12=40点
セカンドサーブで得点
40×60%×80%=19.2点
セカンドサーブで失点
40×60%×20%=4.8点
ダブルフォルト
40×40%=16点
得点48+19.2=67.2点(+9.2点)
失点12+4.8+16=32.8点

どちらも得点は上がります。
16回もダブルフォルトしているのにこれだけ上がるのです。



もちろん究極には高確率で入って高確率でポイントを取れるサーブが理想です。
しかしその前段階ではとりあえず入れることより入った時いかにポイントを取れるかを重視するとサービスキープも楽にできるようになるでしょう。

以上を踏まえてサーブ練習ではこの優先順位で取り組んでみて下さい。

1.セカンドサーブの確率
セカンドが入らない人はファーストも入りません。まずは入れること。

2.セカンドサーブのポイント率
これがいつでも出来る、自分のサーブの根底になります。このポイント率が高いならセカンドサーブを2本続けて打つことも有効な作戦になります。

3.ファーストサーブのポイント率
セカンドサーブよりポイントが取れるように工夫します。別に必ずしもスピードを上げろ、と言っている訳ではありません。スピード以外にもコース、回転、サービスダッシュなどの戦術などを工夫してポイント率を高めます。

4.ファーストサーブの確率
高いポイント率をキープしながら確率を高めていきます。重要なのは「セカンドサーブよりどれだけ有効に打てるか」です。

テレビで解説者がファーストの確率が落ちています、と言うのを聞いたことがあるかもしれませんが、もし50%しか入っていなくても80%近くポイントできているなら大した問題ではありません。もし80%入っていても50%しかポイント出来ていなければその方が問題なのです。




これからサーブを練習するときには4つのどれの練習か意識しましょう。
「今はセカンドを入れる練習」「ファーストでポイントを取る練習」のように目的をはっきりして行うと劇的に上達すると思います。


それではまた、よいテニスライフを。

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